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TOD1,2キャラクターによるレスや日々の記録【サイト話題に付随したブログです】
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まさかの本日作品投下二本目。
シャルティエ(DC版)とシンの話です。



* * *



降りしきる雨。
空を切る坊ちゃんの手。
加速。
刹那に感じられたのはそんなものだった。
放り出された感覚もないソーディアンの器(からだ)は落下の途を辿る。
「シン!」
「馬鹿っやめ…!!」
あれ?坊ちゃんの声?
でも発したのは確かに「ジューダス」だった。
聞きわけができないなんてそうとう混乱していたのだろうか。後で思うことになる。
誰かの手が僕を掴んだ。
「「「シン!!!」」」
何人かの声が重なる。

そうして僕らは深い谷底に放り出された。




油断した…
僕が油断しようがすまいがそれはどうしようもないことではあった。
モンスターの襲撃中に坊ちゃんはふいをつかれて僕ははじかれしまった。
その行き先が深い谷底だなんて運が悪いとしか言いようがない。
誰が一体僕を拾ってくれるんだろう。
もっともそんなことを考える余裕はその時にはなかったわけであるけれど。
だから抱えるような感覚があった時はただ驚いた。
強く抱かれて僕らは落下する。
それが誰なのかは見えなくてもわかった。
『シン!君、なんてことを……!!』
落ち行く先は谷底。
彼女は自分を「助ける」ために身を投げたのだろう。
強く目をつむって彼女は衝撃を待つしかなかった。

ザンっ!!

それは幸いだった。
谷底には雨で増水した川があったのだ。
かといって状況は好転したともいいがたく、強い流れに翻弄されながらようやくたどり着いた岸辺は、まだその流れで彼女を半身から飲みこもうとしていた。
「っはぁっはぁっ」
『シン、しっかり!』
僕は声をかけることしかできない。
流れの中でも自分をとらえて離さないその心はどこから来るのだろう。
彼女はそれでも自分から手を放さなかった。
「シャル…大丈夫?」
あぁ、その上ソーディアンである自分の心配とはどういう了見か。
何度も頷く僕の姿は彼女には見えていないだろう。
そのまま彼女は気を失ってしまった。







ソーディアンに体がないことをこれほどもどかしく思うことは久しくなかった。
ただ、傍らでシンが目覚めるのを待つ。
折からの雨は小ぶりになっていた。
川が増水することだけは勘弁してほしい。
今、流されたらもう僕は誰にもみつかることはないかもしれない。
僕らを探しているであろう、マスターたちを思う。
「…ん」
『シン、気がついた?』
「……落ちたね」
『落ちたよ』
なんといっていいのかわからず、間の抜けたやりとりをしてしまう。
彼女は体を起こすと濡れた黒髪をかき上げた。
「…」
その顔が一瞬苦悶にかわる。
『どこか痛む?』
「うーん…強いていえばあちこちが」
それはあれだけ激流に流されたのだから当然だろう。
目立った怪我がないのは幸いだが、残念ながら僕にはどうしようもない。
シンは自分を片手に携えたまま片足をひきずって崖際まで移動した。
そのまま岩壁に背を預けて座りこむ。
「シャルは?大丈夫だった?」
『僕はソーディアンだよ。痛むところなんかないよ』
「でもコアクリスタルが破損したら大変だし…まぁ無事ならいいけど」
それから沈黙が下りた。
なぜここまで自分のことを心配してくれるのだろう。
湧きあがるのは疑問。
マスターでもないのに。
確かに僕の声は聞こえているけどろくに話したこともないのに。
『…どうしてそんなに僕のことを気遣ってくれるの?』
僕はおずおずと聞いた。
「どうしてって…そりゃリオンが大事にしてるし」
『坊ちゃんが大事にすると君も大事にしてくれるわけ?』
少しとげがあったろうか。
そういうつもりはなかったのだけれど、そのことに気付くと同時にシンは黒い瞳をぱちくりと瞬いた。
少しだけ考える間が返ってくる。
「そうじゃないよ。シャルは私にとっても大事だから」
『…わからないよ』
「そう?どうして」
『だって僕はソーディアンで、兵器なんだよ?』
卑屈だったろうか。
昔に克服した気分を思い出して僕は眉を寄せた。
といっても彼女には見えていないだろう。
それでも彼女はそれを理解したかのようだった。
「でも生きてるじゃない」
『……生きてる…?』
「そうだよ。心がある。シャルは大事な私の仲間だよ」
あぁ、そうなのか。
彼女にとって僕はそういう存在なのか。
なぜか涙が出そうだった。
実体のない僕は顔を覆う。
シンの冷たくなった手がむき出しになった刀身をそっと撫でた。
「…といっても落ちたのがスタンやリオンだったら身投げまではしなかったかもなぁ」
『…は?』
「だってそんなことしてもお互い怪我するだけだし」
『…………僕らだって互いに怪我するところだったんだよ、シン』
「そうかなぁ、シャルは無事っぽくない?」
『だったら初めからかばってくれなくてもいいんじゃないかな…』
「……………それもそうか」
抱える小さな矛盾。
それがおかしくて僕は思わず吹き出してしまう。
「シャル…笑わなくても…」
『だって…君、おかしいよ』
「おかしくない。だって一人で落ちたらみつからないかもよ?」
『あ』
そうか。そういう考え方もある。
でも。
『このまま二人でもみつからないなんてこと…』
我ながらネガティブな発想だ。
でも可能性としてはなきにしもあらずだった。
なにせそれだけ深い谷底。しかも流されてしまったわけで。
「うーん、グレイブを使って階段を作るとか…錬金術じゃあるまいし無理か」
とりあえずその発想には驚かされる。
僕は頭をひねっても大した案は浮かばなかった。
「せめて近くにいれば、晶術で合図が出せるんだけどね。
ってシャル。無線機能は?」
『残念だけど、反応がないね。近くにいないのかも…』
僕から出るのは溜息ばかり。
シンはまた何やら考え込んでいる。
「シルフを使うには高すぎる。せめてシャルがいれば…」
『僕ならここにいるけど?』
「違う。そっちのシャルじゃない」
『は?』
その質問についてはスルーされてしまったが、シンはすっくと立ち上がると高らかにそびえる崖を見上げた。
「ジューダスとか呼んだら来るような気がする」
『なんで?』
「気がするだけ。多分来ない」
言ってみただけか。
僕も他のソーディアンマスターには掴めないとか言われるけどシンも大分つかめない。
「うーん…召喚はちょっと…消耗してるし…登ってみようか」
『いやいやいいや、余計消耗するでしょ!?』
落ちたら危ないし!
心配する僕をよそにシンはまだ思案中だ。
「一日待てばアスカが呼べるから問題ないけど、心配してるよね」
『そうだね』
「暇だし。一刻も早く合流できる方向で考えよう」
暇(滝汗)。
「でもやっぱり向こうが見つけてくれる方が早いかも」
『なんで言い切れるの…?』
「ここにコアクリスタルが2つもあるから」
『?』
僕には何の事だかわからなかった。
ひとつは僕の、もうひとつはシンの持っている水月、だろう。
でもそれがどうして発見につながるのか…
「やっぱり果報は寝て待て、かなぁ」
結論が出たらしくシンは首をかしげるようにすると再び岩壁に背中を預けて座り込んだ。
「それまでおしゃべりでもする?」
そう笑うその姿はどことはなしに安堵感をもたらしてくれた。
…時間が解決してくれるならそれも悪くはないだろう。
『そうだね、僕ももう少し話がしてみたい…かも』
「かもかよ」
『してみたい』
苦笑で返すと良くできましたと言わんばかりの笑みが返ってきた。

まだまだ僕には知らないことがある。
でも、それをこれから知っていけるのだろうか。
何かが変わった気がした事件の日だった。







ソーディアンシャルティエの確かな変化。
彼女、から「シン」になっているところ。
着実に距離が縮まった感があるお話になりました(笑)
ちなみにシャルがいれば!というのはオリジナルのシャルにはレンズの感知能力があるからです。
…それにしてもソーディアンを取り落とすなんてオリジナルリオンじゃある意味、あり得ない展開ですな(笑)

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