帰りたい場所

「人は生まれた場所に帰りがたるものだと思う？」
「なんだいきなり」
「私は思うんだ。時々は、陽だまりみたいな懐かしさに浸っていたかったんだなって」
「過去形なのか」
「まぁね。帰る場所のなくなってしまった今は、ここにいることが幸いだと思っているよ」
「どういう意味だ？」
「ダリルシェイドは、私の生まれた街に似てる。
海が近くて、人が多くて、でもどこかお互いが無関心で、そうでもないところが」
「……」
「私はこの街が好きだよ」
「そうか」

──　生まれた町に住み続ける人には、わからないだろ郷愁がある。
落ち着ける場所が見つけられた人間はいい。が、それが見つからない人間は、ずっとずっと、探し続けるんだろう。

シンの本編とは何ら関係ないバックボーン。
生まれは都内、幼少の頃地方へ引っ越すが、東京に家があったため何度も行き来する。
学生時代の住処だったり、小旅行時の拠点だったり、気ままな時間を過ごす隠れ家でもあった。
が、やがて家は取り壊されてしまう。
引っ越し先では、なんとなく行きすがりの旅人のような居心地だったシンは、帰る場所を失ったような心地を味わったことがある、と。
ダリルシェイドは、そういう意味では第二の故郷に近く、落ち着く場所じゃないかと思います。